Be-Natureのこれまで

何かが起きるとき、そこには人と人の出会いがある

1991年、私にとって最初の転機となる、岩谷孝子(現NPO法人フリーキッズビレッジ理事長)との出会いがありました。岩谷は、1986年に、有限会社ピースフルファミリーを設立し、雑貨の輸入卸事業を展開していました。当時、私はアパレルブランドで店舗開発や販売促進業務を担当していて、渋谷に出店する雑貨コーナーの品揃えを検討しており、その仕入れ先として、岩谷を紹介されたのがきっかけでした。

岩谷は、1990年の第2回国際イルカ・クジラ会議(オーストラリアで開催)に参加しており、高い環境意識を持っていました。一方の私は、プライベートでアウトドアや自然に傾倒しており、二人はすぐに意気投合。そこから、私は1991年12月のアイサーチ・ジャパン(国際イルカ・クジラ教育リサーチセンター)の設立に関わることとなり、1992年の第3回国際イルカ・クジラ会議(ハワイで開催)にも参加しました。

その会議で「1994年に、日本で第4回を開催する」ということが決まり、取り組みへのエネルギーの高まりを感じていた私は、会社を退職することを決心。アイサーチ・ジャパンの活動に専念し、1994年4月に、江ノ島と小笠原で第4回国際イルカ・クジラ会議を開催したのでした。

全てはBe-Nature Schoolからはじまった

第4回国際イルカ・クジラ会議は、環境系の国際会議として大きな反響を得ました。そして、それをきっかけにして出会った、ダイビングインストラクターの長谷川孝一(地球の楽校代表)、フリーダイバーの松元恵(ビッグブルー代表)、岩谷孝子、長野修平(Nature Works主宰)、私の4人がBe-Nature Schoolの原型となるプロジェクトを発足したのが1994年12月でした。

そこから1年以上にわたるコンセプトワークの積み重ね、プログラムの検討、モニターの実施、さらなる仲間との連携を経て、1996年4月にBe-Nature Schoolを開設。都市で暮らす大人を対象にした「自然の心にふれて自然な自分に出会う年間プログラム」として、自然・都市・社会・心と体をつなぎ直す総合的な内容が特徴でした。

このとき有限会社ピースフルファミリーが運営母体となり事業は実施されました。岩谷・長野・私の3人体制で運営を担当していましたが、98年初頭に岩谷はアイサーチ・ジャパンの活動に専念するためにBe-Nature Schoolを離れ、同時に長野は運営サイドから講師へのステップに歩みを進めます。これを機会に有限会社ピースフルファミリーの代表に私が就任し、社名も有限会社ビーネイチャーと改め新体制が生まれました。現在の有限会社ビーネイチャーにつながる基礎がここで誕生しましたが、その根底に流れる思想や知見は全てBe-Nature Schoolから始まったのです。

企業との連携へ

個人を対象にしたBe-Nature Schoolの運営を通じて私が痛感したのは「自然とのつながりの実感」は、ビジネスパーソンにこそ必要だということです。自らの意志でBe-Nature Schoolに参加し、自然の心にふれて自然な自分に出会った個人は、それぞれにエネルギー得て、また自分の人生を歩んでいきますが、その広がりには限界があります。

こうした「自然な自分に出会う」機会を企業人に研修として提供することで、社会全体の環境意識を高め、Be-Natureな人=自分らしく自然体な人を増やしたいと願い、そのためのアクションをおこしましたが、実際には実現できない状態が続きました。

そんな中、Be-Nature Schoolの講師の一人で当時広告会社の社員だった中野民夫(東工大名誉教授)から持ちかけられたのが自動車メーカーとの連携による「親子の自然教室」です。その当時(1998年)はまだCSRという概念はなく、自動車メーカーが環境教育を行うこと自体が画期的だった時代です。Be-Nature Schoolの特徴だった年間プログラムの精神を活かし、単なる1回限りのイベントではなく、自然との関わりを継続する仕掛けをもりこんでの実施でした。

環境コミュニケーション、CSR、ブランドプロモーションと企業のニーズは様々ですが、その後、有限会社ビーネイチャーが取り組む企業との連携事業にはこのときの精神が引き継がれ、基礎となっています。

チームビルディングというニーズから組織活性化・組織開発へ

「自然の心にふれて自然な自分に出会う年間プログラム」をより効果的に進めるために、Be-Nature Schoolが年度頭に取り入れていたのは、メンバー間の関係の質を高め、チーム力を高めるための“野外チームビルディングプログラム”です。

人と人との協働によって動く組織にとって、どうチーム力を高めるかは永遠のテーマ。Be-Nature Schoolでは、人と人の関係だけでなく、自然とのつながり、心と体とのつながりも意識したチームビルディングを実施してきましたが、要望に応えるようにして企業のチームビルディング研修を行うようになりました。

その経験を積むうちに見えてきたのは、単に課題をクリアして、達成感による興奮状態をつくりだすだけでは、意味がないと言うこと。共通の体験を通じてチーム感を醸成するだけでなく、自分自身と向き合い、他者との対話を重ねることが、継続的な関係の質向上を生み出し、真の組織開発につながるという確信です。

道具として、思想としてのファシリテーション

こうして、数々のプログラムやワークショップ、研修を進めてきましたが、その上で重要な役割を担うのがファシリテーションです。一方的に知識を提供するのではなく、一人ひとりの気づきを大切にし学びへとつなげていくファシリテーションのスキルは、有限会社ビーネイチャーの事業において最も基本的かつ重要なコミュニケーションの手法です。

同時に、一人ひとりが自然の一部であり、その人らしく自然体であることを是とする私たちにとって、ファシリテーションは活動の根底を支える思想でもあります。そうしたファシリテーションの実践や重要性の実感をもとに、2003年、Be-Nature Schoolで「ファシリテーション講座」を開始しました。以降、組織や企業でのファシリテーター養成、CSRや市民参加の場での対話の場づくりやファシリテーターの派遣など、幅広くファシリテーションに関わる事業を展開しています。

本来の価値と、しあわせな関係を育みつづける

Be-Natureをはじめてこの30年近くの間、振り返ると数多くの人と出会い、私自身が興味を持って面白い!と思ったことを,その時その時の強い熱量をもってワークショップやプログラムとして企画し、実施して来ました。食、先住民の智慧、身体感覚、パーマカルチャー、ストーリーテリング、etc…その企画の根底で共通しているのは、人と自然のよりよい関係を育むこと、Be-Natureな存在としての一人ひとりを応援することでした。

自分自身をも含めた自然への畏敬の念と洞察を根底に、ひとり一人の思いを大切にするファシリテーションというスキルを活用し、自然・人・社会の幸せな関係を育んでいくこと。人や組織、地域が、自然な状態で力を発揮し、Be-Natureな存在となっていく過程を、これからも伴走していきます。