コラム

ファシ講師インタビュー :「目指したいのは一緒に“カム!”なんだよね」その2:アウトカムの秘訣

2013.11.28

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12/7(土)はファシリテーション特別講座の最終回、「準備の7割はこれでOK!皆がその気になるアウトカム設定の秘訣」を実施します。講座の担当講師はマーロンことビーネイチャースクール代表の森雅浩。今回のインタビューは、この企画・テーマに対する鋭いツッコミを期待して、トミーこと冨岡武さんに聴き役を依頼しました。講座への想いとその背景にある実体験をまとめてお届けいたします。日々ファシリテーションの実践に取り組んでいる皆さんの参考となれば幸いです。
(聴き手:冨岡武 話し手:森雅浩)

アウトカムの秘訣は「主語」と「幅」

冨岡:マーロンがそれ程大事にしていた言葉とは知らなかった。聞いてみるものだね。僕も「アウトカム」は使うけれど、マーロンの言うような「来た!」というニュアンスをそこまで含めたノリでは使っていなかったな。で、実際に「来た〜っ」と思えた具体例を聞いてみたい気がしてきた。自分なりに「来た!」と思えるようなアウトカムが作れて、実際の会議も楽しくなったようなケース、ない?

森 :今ね、里山キッズ[1] という町田での社会貢献活動に関わっていて、その実行委員会の会議が年3回あるんですよ。活動自体は毎月やっているものなんだけどね。自分は実質的には会長みたいな役割で、実務には関わらないんだけど、会議では全体の方針を決めたりするの。この前、そのミーティングに向かう道中でアウトカムを考えたん
だけど、あれは良かったよね。

冨岡:へえー、具体的にはどんなの?いきなり言っても答えにくいかもしれないけど。

森 :ちょっと待って、確認するから(離席)。アウトカム作るときには、自分なりの法則があってね、ファシ講座の連続コースでも伝えていることだけど、「行為目標」と「成果目標」みたいに、やることが分かって、やった結果がどうなっているかが、端的に表現された短い文章がいいと思ってるんだ。そうすると皆やる気がでるんだよね、経験的に。(資料を手に)ああ、これこれ、ちょっと長いけど。

冨岡:こういうのは百聞は一見にしかず、だよね。
森 :えーとね、「里山キッズの現状を共有し、次年度以降のステップへの道筋がイメージでき、元気とやる気が満ち満ちている」。まあこれは、ボランティア活動なので少しお気楽な感じがあるけれど。もうちょっと練ればシャープに出来たかと思ってる。

冨岡:確かに、ちょっと長いね(笑)

森 :でもまあ、実際は、全体的に雰囲気がやや暗くて、ネガティブな状況の共有からスタートしなくちゃいけない場面だったんですよ。なので、もう少し先を見越した話し合いをしたい意向を込めてみた。結果、皆もそこに乗ってきた感じだったね。例えば、「もう少し長いスパンで見て行こうよ」という話がでてきたり、行き当たりばったりでこなしている感がある中だったから、次年度以降のステップとか道筋みたいな文言に皆が触発されたりして。

冨岡:そのアウトカムはどういうタイミングで示したの?

森 :その時は、僕が一番最初に書いちゃった。

冨岡:一番最初にね。皆はどんな反応だった?

森 :まあ、いいんじゃない?って(笑)特に異論はなかったね。だって、「元気とやる気が満ち満ちてる」ってことに、嫌だという人はあまりいないと思うし。現状把握しなくちゃいけないことも、来年以降のことを考えなきゃいけないことも分かってるしね。でも、あえてそれらを並べて、文章につなげておくことと、参加者が主語になってるっていうのが大事なんだよね。ただそれだけのことなんだけど、色んな所でファシリテーションの講座やって、参加者を見ていると意外に難しいみたいね。慣れれば3分で出来るんだけど。

冨岡:なるほどね。「参加者を主語に」って、すごく分かる気がする。ついついファシリテーターって、自分がその場をなんとかしなきゃいけないと思っちゃうでしょ。

森 :そのことは、講座でも伝えた上で、皆にアウトカム作ってもらうけど、なかなか意識切り替わらないみたいなんだよね。何度か繰り返しやると染み着いてくるんだけど。

冨岡:だから秘訣なんだ。

森 :特別講座では色々なテストケースを用意してアウトカムの文章を作るトレーニングを入れるつもり。

冨岡:確かに、さらっと言っているけど、参加者を主語にどういう場で過ごして欲しいか、どう「カム」な感じになって欲しいかを考えて言葉に表すって、なかなかエネルギー要るね。ちなみに、連続講座の演習では、ファシリテーター役と参加者が一緒にアウトカムを作るじゃない?講座の中での練習ということもあると思うけど。今の事例ではマーロンが自分で考えて最初に示していたけど、実際はどう?

森 :アウトカムを作るのはファシリテーターの仕事だって明確に思ってるよ。アジェンダは皆で考えてもいいけど。ファシリテーターが示して瞬時に皆が納得できるようなアウトカムを作れるのが理想だよね。結構、真剣に考えないといけないし、気持ちが集中していないと出来ないよね。アウトカムが自分の中でハラ落ちしていると、ワークショップのプログラムデザインが楽になる。今まで散々ワークショップを作りまくってきて、アウトカムが曖昧なままプログラムデザイン進めちゃったりすることもあったけど、その場合は、結構時間かかるんだよね。だから、7割かどうか分からないけど、すごく大事だと思ってる。

冨岡:実際、参加者を主語に、自分の現場に合わせてアウトカム作って行くのって大事なことだと思うけど、それに加えて、もう一つ何か「楽しい」とか「やる気」につなげるコツみたいなもの、ないかな?

森 :それはね、ある種の幅を持たせるってことかな?

冨岡:ある種の幅をもたせる?

森 :アウトプットとか必ず達成しなくちゃいけない目標の到達点とは違う表現をアウトカムとして作っておいた方がいいということ。絶対決めなきゃいけないことはアジェンダの中に入れておけばよくて、もうちょっとそれを超えた大きなところでの皆の状態みたいなものがあると、皆のやる気が結構続くの。

冨岡:今、自分でもイメージしながら話を聞いているけど、目標とかになると「点」というか、それが出来たか出来なかったかの判断になっちゃう。アウトカムっていうのはもうちょっと、幅があるんだ。

森 :そう。ミーティングって気持ちや温度差がある人たちが集まってやるものでしょ。だから、この中だったら皆入るだろうなっていう、ある種の曖昧さや理解の幅とか、幅を持たせた表現にしておいた方がいい。

冨岡:なるほどなるほど。会議って、やっぱり企画する側にやる気があって、何かを出したいとか決めたいっていう温度があるよね。それに主催者に一つの方向性を見せられた時点で楽しくなくなる。皆がその気になると書いているのは、そういうことなんだ。

森 :そう。講座の中では皆も意見出してくれるだろうし、自分も入ってやりとりしながら、作っていけると思う。

冨岡:「カム!」にピンと来たひとはぜひ参加してほしいな。


[1] 東京都町田市忠生地区に残る雑木林を舞台にした、地域の小学生が対象の体験教室。里山保全作業などを通じ里山文化の継承と子ども達の健全な育成を目的にしている。保育園、自然学校、冒険遊び場、環境保全団体のメンバー達が有志で実行委員会を結成し、2005年より実施。Be-Nature School森は現副会長。>>


 

インタビューを終えて

「期待値としての点ではなく参加者に寄り添った幅を考える」「一緒にカム!」そんな姿勢に「やさしいファシリテーション」という言葉が浮かんできました。実はインタビュー前は準備が大切なんて当たり前で面白くないテーマだなあなんて思っていたのですが、自分自身の姿勢について「はっ」とする気づきをいただきました。ありがとうございました!
(聴き手:冨岡武)

 


【講座情報】
「準備の7割はこれでOK!〜 皆がその気になるアウトカム設定の秘訣」
日時:2013年12月7日(土) 13:00~17:00(4時間)
場所:Be-Nature School 松濤SOHO