コラム

ファシ講師インタビュー:「特別講座に込めた“will & skills”by 冨岡武&森雅浩」その2<実践編>

2013.10.24

「本当に大切なことは自分たちで考えよう」というファシリテーションを続けて10年が経ちます。その最初の一歩として「言葉の意味」を丁寧に扱うことを大切にしてきました。”

と語る、トミーこと冨岡武さん。今回の特別講座の原点となる体験と、そこからの実践を聞きました。ファシリテーションの実践を重ねる皆さんへの気づきとヒントになれば幸いです。(聴き手:森雅浩)

 

実践編

モリ: ビーネイチャーのファシ講座では、「共有」「拡散」「クリエイティブ・カオス」を経て「収束」「共有」という流れがあって、最初の共有が重要という話をしているけれど、トミーがやっていることは、「共有」のステージにおけるもの、という理解でいいのかな?

トミ: 問題の定義は、一番最初の「共有」でやることだと思う。言葉の定義は、クリエイティブ・カオスで扱うこともあるし、「今日はこれについて話しましょう」という具合に「共有」のステージで確認することもあるね。

モリ: ということは、どのステージでも、そもそもその言葉の意味が曖昧であるがゆえに、話が生産的に進まないということが起こりうるということだ。

トミ: そうそう。

モリ: それで、実際にトミーがファシリテーションする中では、皆が曖昧なまま使っているような言葉を、定義づける作業が生まれてくるんだよね?
ここは、言葉を明確にしておかないと、話し合い自体がダメになりそうだなって感じる場合に、皆に定義を問いかけ
る、シンプルな「型」みたいなものがあったりするの?もしそうなら、ファシリテーションのスキルとしても役立

つだろうし、自分自身の言葉の曖昧さに対する問題意識を持ってる人にも役立つと思うんだけど。

トミ: そうだね。僕としては、自分自身が曖昧な人が、他の人に対して「言葉を明確にしましょう」なんて、そうそうできないと思ってる。だから、まず自分自身が大切だと思っている言葉に対して、どのくらいの感覚を持っているかということから講座をスタートしたいと考えてる。
「それってどういう意味?」と問われたときに、即答できないことが多いなと思う人には是非来てほしい。

写真2

 

モリ: 講座のタネ明かしになるかもしれないけど、言葉を定義していくメソッドはあるんだろうか?

トミ: 個人で自分の言葉を明確にしていくには、腹に落ちるまで考えるに尽きるのだけれど、「ファシリテーターとして現場にどう気づかせてますか?」といことであれば、実際やっていることがある。具体的に言うと、まずその言葉に関わる自分の経験を思い出してもらっている。例えば「問題解決」だったら、「自分で問題を解決した経験を思い出してください」と。それから、なぜ、それを問題と思ったか、なぜ取り組もうと思ったかを少し深めてたりする。そうやって自分の経験を振り返りながら、自覚的に考えつづけると、スッキリした定義に近づいて行くんだ。

モリ: 今、「問題解決」という例がでたけれど、こうした4文字を「問題」と「解決」に因数分解するのも一つの方法?

トミ: そうだね。実際の企業研修でも「問題」と「解決」は分けて扱っていて、「解決策」に対しては「なんでその解決策を選んだの?」という体験を入り口に、「解決策では、何が大切ですか?」というように続けて、言語化を進めていったりする。

モリ: 一昨年、「想いを助ける論理思考」という特別講座をビーネイチャーで実施してもらったけど、今回の「言葉を定義しよう」も、ロジカルシンキングにつながる何かがベースにあるの?

トミ: 論理思考というより、むしろビーネイチャーの講座で大事にしている「自分の経験から考えよう」がベースになってる。中野民夫さんの『ファシリテーション革命』の冒頭に書かれていた、ガールスカウトにおける新しいリーダーシップ像は「べき論」ではなく、現場での実践経験から生まれてきてたものだったよね。自分たちの経験をもとにつくった言葉には実感値がある。これは、ファシリテーターとして「問いを立てる」時にも重要なことだとおもう。基礎講座の中ではあまり丁寧に扱えていないけど、この「問いを立てる」の部分にもつなげたいね。

モリ: 実際、今度の講座はどんな感じで進すんでいくんだろう? トミーが実践する「型」の提示もあるの?

トミ: 僕はよく辞書や英英辞典をひくのだけれど、目から鱗が落ちることが多くて、それを一つの「型」として示す事はできると思う。それと、もう一つ大事なことを伝えたい。言葉の定義は、その人の経験から実感値が表れるものだから、当然、経験が変われば、言葉も変わるということ。最初に挙げた元上司の「マネージャーは人を育てなさい」という言葉は、その人自身が色々な経験を経て、シンプルに行き着いたものだったけれど、僕が後から見つけた「しっくり」くる定義はもう少し違っていた。
だから、言葉というのは、変わってもいいものだと伝えたい。そうでないと、押しつけがましいものになってしまうと思う。

モリ: 「押しつけ」にならないようにするには、その場にいる人たちで「こういう意味だよね」と、皆で確認したり、共有できることを大事にすればいいんだよね。

トミ: そう。そのために今回の講座では、まず1人ひとりが自分の言葉と向き合う時間をつくろうと考えてる。その後で、言葉の意味合いを相互に共有すると、同じ言葉にも、各々のイメージがあることや、そこにあるズレが見
えたり、色々気づきが得られると思う。このことに対する理解は、1人で考えるより、集いあい問いあう場を経てこそ深まるという確信が経験上あるから、是非その感覚をこの講座で体験してもらいたいと、思っている。組織でよく使われる曖昧な言葉を集めたケーススタディ形式で進めるのもいいね。いずれにしても、講座が終わった時に、自分自身の曖昧さや、自分が普段一緒に行動する人たちと確認しておきたい曖昧な言葉、現場でズレを確認していくステップ等を日常に持ち帰ってもらいたいと考えてる。

モリ:なるほど、この講座は応用講座なんだけど、ある意味ファシリテーターの基礎力というか、地頭を鍛える講座と言えるかも。話し合いがうまくいかない場面で困ったとき、どんな立場でかかわっていても、この講座でのトレーニングが役立ちそうだね。


インタビューを終えて

仕事でもボランティア等の課外活動でも、同じ傘の下で使われる共通言語は多くあるけれど、改めてその意味を確認する機会は以外と少ないもの。確かにミーティングの途中で、「そういう意味で使ってたの」?なんて根本から覆ってしまった経験もあったりしました。「共通言語を話す」イコール「意味や定義が共有される」では決してないんですね。
互いのやりとりの中に「噛み合なさ」を感じたとしたら、言葉の曖昧さを疑ってみること。さらには、自分の曖昧さが、盲点になってることだってある、ということなのでした。
ということで、今度の講座は、個人として何らかの組織にかかわるなら身につけておきたい「言葉に対する敏感さ」と、「曖昧さ」や「ズレ」を捉え、明確化していく術を知る、お役立ち度の高い構成になる模様。ファシリテーターとしても一皮むける学びになりそうだと、納得したのでした。本番の講座、期待してます!(事務局)